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馬の耳に念仏的コンサートレポート:バレンボイム編

先週は、もはや音楽界の巨匠とも言える、
ダニエル・バレンボイム氏の演奏を聴きに行って参りました。
基本は協奏曲でのピアノ演奏だったのですが、それだけにとどまらない、
連弾あり、オーケストラのみ演奏あり、の非常に興味深いプログラムでした。

オーケストラはボストン交響楽団。
指揮はジェームス・レヴァイン氏。(ちなみに、前任は、かの小澤征爾氏。)
彼はメトロポリタンオペラの音楽監督もつとめており、かつ純粋なアメリカ出身の指揮者ということで、ここでは、非常に人気が高いです。

注目すべきは、バレンボイム氏もレヴァイン氏もピアニストとしても著名であるということ。
そして、非常に交友が深い。(らしい。)
だからこそ実現した、夢のコラボレーションでした。
また、二人とも最近は指揮者としての活躍の機会が多く、
二人のピアノを同時に楽しめるというまたとないチャンスでもありました。

プログラムは以下の通り。

SCHUBERT:Fantasie in F Minor for Piano Four Hands, D.940
BEETHOVEN:Piano Concerto No. 3
ELLIOTT CARTER:Interventions for Piano and Orchestra
STRAVINSKY:Le sacre du printemps

***以下、長文記事になります****

ホールは、ポリーニ様もリサイタルを行ったカーネギーホール。
やっぱりここは音響がいいですね~。
どんなppの小さい音でも、ホール中にその音が響き渡ります。

席は、3階席の一番前の真ん中で、前を遮るものもなく鍵盤もきちんと見えました。

さて、バレンボイムさん、最近は指揮を本業にされているようですので、
正直に言うと、
「練習不足とか、そういうのがあるんじゃないの?」なんて思っていました。
しかし、そんなのは、全くもって杞憂でありました!
というより、そんなことを一瞬でも考えてしまった自分が恥ずかしくなりました。
(バレンボイムさん、本当にすみません・・・!)

いくら指揮業に重心をおこうとも、天才ピアニストはあくまでも天才でした。
計算されつくしたタッチ(pもfも)、あくまでも粒の揃った音、
ときに現れるダイナミックなルバート。
大音楽家の放つオーラと迫力のある演奏に、観客は皆、総立ちで賞賛。
普段は拍手しかしない私も、この日ばかりは「ブラボー!」のエールを送りました。

素晴らしい音楽は、素晴らしい音楽家の手によって、ますます輝きのあるものへと
昇華していくのだなぁ、と実感した次第です。

以下、気が付いたことなど・・・

<トリルが・・・・!>
とにかく指がよく回り、トリルの美しさといったら、
機械でもあんなに美しい音は出せないのではないかと思えるくらいの
速さとムラのなさでした。
指揮を本業にしながらでも、ピアノの方も日々精進されているのでしょうね。
素晴らしいテクニックに驚嘆!

<宙に舞う両腕>
ラン・ランさんほどではないですが、わりと全身で表現される弾き方をされる
という印象でした。(ラン・ランさんの記事はコチラ
pについては、鍵盤に潜りこむように、
フォルテについては、全体重を鍵盤に乗せるように弾いていました。
弾き終わりに鍵盤から手を離すときには、宙に大きく腕を振り上げることが多く、
それがとても印象的でした。
(熱いものも触ったとき、「アチッッッ!!」とその物体からすごい勢いで手を離すイメージ。
こんな例えでごめんなさい。)

<独自の解釈?>
バレンボイムさんには、モーツァルト=古典弾き、というイメージがあったので、
テンポに正確に淡々と弾くのかな、と思っていたのですが、
そのイメージも見事に崩れました。
今回彼が弾いたプログラムは、古典と現代音楽だったのですが、
ルバートのかけ方など、ロマン派、印象派を弾いているようで、
これは彼なりの解釈の結果なのかなと思います。
興味深かったのは、ピアノコンチェルトの3楽章でしたが、それは後述します。

<優しさ溢れる紳士>
3曲目の現代音楽は、作曲家(Carter氏)がまだ存命しており、
観客席に招待されていました。
100歳になるCarter氏をステージにお迎えするとき、お送りするときに、
バレンボイムさんは常にCarter氏のそばに寄り添い、彼を支えていた姿には、
一人の人間としての優しさが溢れていて、とても心が温かくなりました。

続いて、各曲への感想など・・・。

SCHUBERT:Fantasie in F Minor for Piano Four Hands, D.940
これは、バレンポイムさんが高音部を、レヴァインさん低音部を担当。
先ずは、二人のぴったりと息のあった演奏にため息・・・。
短調なので、揺れる部分も多いのですが、
二人の演奏は全くといっていいほどぶれません。
お二人とも多忙を極めているのであろうにもかかわらず、この阿吽の呼吸ぶりは
一体いつどこで合わせの練習をしているだろうかと思わせるほど。
プロの音楽家だからこそ成せる業なのかもしれません。
それにしても、連弾は本当に華やかでいいですね。

BEETHOVEN:Piano Concerto No. 3
実はこの曲の生演奏を聴いたのは、今年で3回目。
もちろん、これまでのどの演奏よりも質が高く、素晴らしいものでした。
「一流のオーケストラとピアニストによって奏でられる音楽は、やはり一流である」
今回の演奏を聴いて、私はそう確信しました。

・3楽章(Molto allegro) (長くなるので、1,2楽章は割愛します。)
今まで聞いたことがないくらいのスローテンポなピアノ独奏での始まり。
正直言って、非常に違和感がありました。
それに続く、オーケストラも非常にスローテンポ。
ロンドなのに・・・、と思っていたら、中間部のピアノ独奏からは
聴きなれた速度へとテンポアップ。
ただ、木管の副主題部分は非常にゆったりとしたペースで、ピアノとのコラボが見事。
始めはスローテンポだった主題も曲が進むにつれ、通常のテンポへと戻り、
バレンボイムさんの真骨頂(?)、真珠のようにコロコロと転がるような軽快なタッチは
ますますその輝きを増し、聴く者をどんどんと彼の演奏へと引き込みます。
オーケストラとの息はあくまで乱れることはなく、
豪華なフィナーレには演奏終了と同時に観客席から「ブラボー!」の嵐でした。

ELLIOTT CARTER:Interventions for Piano and Orchestra
私の苦手な現代音楽です。(非常に稚拙な感想となりますが・・・)
ここでも、バレンボイムさんとオーケストラの見事なコラボレーションは観客を魅せてくれるのですが、あんなに、
  ・リズム感がなくて、
  ・調もよくわからない音楽 (お化け屋敷のテーマみたいな・・。)
を弾けるなぁ、というのが率直な感想です。
現代音楽、私にはまだまだ敷居が高いです・・

STRAVINSKY:Le sacre du printemps
これはオーケストラのみの演奏でした。
この曲もどちらかといえば、現代音楽のカテゴリー。
激しい(打楽器、金管が大活躍)のはいいのだけど、
やっぱり、私は音楽によって癒されたい方なので、
「聴くぞ~~~~!」という心の準備が必要な音楽は、ちと苦手・・sweat02

最後に・・・・。
今回のコンサートは、指揮者が演奏するという非常に興味深いものでした。
ベートーベンの3番の異色な解釈も、おそらくバレンボイムさんが指揮者として
他のピアニストの演奏を振るときに、
「自分ならこう弾くのに」
といった思いがあってのことなのだろうと思いました。
また、彼のその意図を120%汲み、そういう音楽を作る、レヴァインさんも素晴らしかったです。お二人の友情と信頼関係があってのことですから。

連弾あり、変り種ベートーベンありで、2人の指揮者のちょっとした遊び心を垣間見た、
とても印象深いコンサートでした。

こうなると、アシュケナージ様のコンチェルトなんかも聞いてみたくなる私です。

(最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございました。)

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オペラ・コンサート」カテゴリの記事

コメント

ぽりぃさん、こんにちは。

名前の件、混乱させてしまってすみません。

それにしても、コンサート、
さすがニューヨーク!の豪華さですね。
バレンボエムさんのお名前は拝見したことがあるのですが
レヴァインさんという方は初耳です。
でも、きっと巨匠なんですね。

プロの連弾ってほとんど聴いたことがないのですが、
私たちの教室の発表会レベルであっても、
連弾はソロとは違った華やかさやダイナミックさがあるのですから、
プロ2人による演奏となると、
その迫力はきっとものすごいものなのでしょうね☆

今回も詳細なレポートありがとうございました。

投稿: はな | 2008年12月16日 (火) 04時29分

ぽりぃさん~、またまたすばらしいコンサート・レポート、ありがとうございました。

端から端まで、舐めるように(キャー)読んでしまいました。とってもおもしろかったです。

一流の音楽家のピアノを聴いていると、ピアノはツールに過ぎないのだな~と思ってしまいますよね。その人だけがもつ解釈、表現力を発揮するための。

あー、お二人の演奏、とても聴いてみたいです。なんて、ゴウカな・・・。

ちなみに、ワタクシメも現代音楽は苦手なことのほうが多いです・・・。あの抽象的なのが、ちょっと・・・。

投稿: gezkaz | 2008年12月16日 (火) 04時58分

はなさん、こんにちは!
(まだちょっと違和感・・・。でも、すぐに慣れます。)
>レヴァインさんという方は初耳です。
多分、日本ではあまりなじみがないかもしれません。
私もこちらで知りましたし、知ったのは「指揮者」としての
レヴァインさんなので、ピアノを弾かれるということ自体も知ったのは最近です。
多分、CDとかは出していないと思いますが、もちろん、お上手でした!
>プロ2人による演奏となると、
>その迫力はきっとものすごいものなのでしょうね☆
ええ、その通りでした!
音量も出ますし、何しろ、息がぴったり!というのが迫力に拍車をかけていましたよ。
だた、大の男が二人で鍵盤に向かう姿は少し微笑ましいものがありました。(笑)
でも、演奏は素晴しかったです!

投稿: ぽりぃ | 2008年12月16日 (火) 14時16分

gezkazさん、こんにちは!
こんな纏まりのない長大記事を最後まで読んでくださって
ありがとうございました!
楽しんで頂けたのなら、よかったです。(書いた甲斐がありました。)
>ピアノはツールに過ぎないのだな~と
いやはや、本当にその通りです。
あれだけ、自在にピアノを扱ってみたいものですよねー。
こちとら、いつもピアノに翻弄されるばかりで・・・・。
>あー、お二人の演奏、とても聴いてみたい
二人が並んでいるだけでも凄い絵なのに、演奏まで!
と考えたら、本当に贅沢なコンサートでした。
彼らにはまたこういう変わったコンサートを企画してほしいです。

投稿: ぽりぃ | 2008年12月16日 (火) 14時27分

>熱いものも触ったとき、「アチッッッ!!」と
>その物体からすごい勢いで手を離すイメージ。

変な意味はないですが、こういう演奏をする人って、ホントにいるんだ!って純粋に、おどろいちゃいました(笑)
こないだたまたま見てたドラマの主人公がピアニストの役だったんですけど、あちち!、やってたんですね。
「うっそだー、これはないわ(笑)」なんて思ってスミマセンでした>俳優さんcrying

私ももっと見聞を広めなければcoldsweats01

投稿: のっち | 2008年12月16日 (火) 16時27分

お久しぶりです。

バレンボイムさん・・・
ニコニコ動画でベトソナを弾いてる動画を発見して
素敵だな~と思ってたんです。

ホント豪華なコンサート♪さすがニューヨークですね~

投稿: ゆうこ | 2008年12月16日 (火) 17時10分

私はお二人ともお名前を存じ上げてないのですが、でもレポート、すっごくおもしろく読みました。
私は地方に住んでいるので生の演奏を耳にすることがないので楽しかったです。。

現代音楽、ほんと幽霊屋敷みたいですよね。

私はストラビンスキーでもちょっと苦手です。

投稿: のぞみ | 2008年12月16日 (火) 18時53分

のっちさん、こんにちわ!
いつもコメントありがとうございます!
>こういう演奏をする人って、ホントにいるんだ!
ホントにいました!
多分、ある程度「パフォーマンス」的なウケは狙ってると思うんですけどねー。
(バレンボイムさん、ごめんなさい・・)
でも、プロだから、これが絵になるんですよー。
もし、私みたいなのが、そんなことをしようものなら・・・。
「ひっこめーー!へたくそーーー!ちゃんと弾けーーー!」
の野次が飛ぶこと間違いなしですね。
(いや、そんなことは決してしませんが・・。する余裕もないデス・・・sweat01

投稿: ぽりぃ | 2008年12月17日 (水) 01時03分

ゆうこさん、こんにちは!
ご無沙汰しています、お元気ですか??
バレンボイムさん、今はだいぶお歳ですが、
若い頃の写真がホールに飾ってあって、
凛々しくて素敵でしたshine
こういうコンサートだけには、本当にここは恵まれています。
帰国してしまったらもう行けないので、むさぼるように足を運んでますよー。

投稿: ぽりぃ | 2008年12月17日 (水) 01時04分

のぞみさん、こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。
こんな長いレポート、最後まで読んでくださってありがとうございました。
現代音楽、のぞみさんも苦手ですか?
私もどうにも、好きになれないのですよねーー・・。
あの音をオーケストラで奏でる意味がよくわかりません・・・。
まだまだ敷居は高いですね。

投稿: ぽりぃ | 2008年12月17日 (水) 01時04分

またまた素敵なコンサートに行かれたんですね☆
バレンボイムは、指揮してるCDが2枚ぐらいうちにあります(オケの曲です)。
かなり昔のものみたいですが、どの演奏も好きで、私のスタンダードになっています。

記事読ませて頂いて、ピアニストが指揮者になることのメリットというか・・・「ピアノを弾く人がそのコンサートを見に行くと、1粒で2度おいしい♪」んだなーと感じました!
コンサートでも2つの自分を見てもらえるし(??)、
ピアノの経験を指揮に生かし、指揮の経験をピアノに生かし、といった、相乗効果のようなものもあるんでしょうね。
もっとも私の場合、そんなことしたら間違いなく頭が飽和してしまいますが・・・

「春の祭典」私は実は結構好きなので(ぽりぃさんのおっしゃる通り癒し効果はないのですが^^;わけわからなさに惹かれるというか・・・血圧が上がるというか)、ちょっぴりうらやましいです。。

投稿: poco | 2008年12月19日 (金) 00時07分

pocoさん、こちらにもコメントをありがとうございます!
>ピアノの経験を指揮に生かし、指揮の経験をピアノに生かし、
>といった、相乗効果のようなものもあるんでしょうね
そうですね。今回のピアノコンチェルトでは、まさしくそれを実感しました。
バレンボイムさんは今回はピアノだけで、彼が指揮をしている
音楽は実は聞いたことがないのですが、彼の作るピアノ以外の音楽にも
とても興味が沸いてきています。
pocoさんがスタンダードにされているのであれば、間違いないですね!
>「春の祭典」私は実は結構好きなので
おーー、あれは、「春の祭典」という意味だったのですね。
(どうにもフランス語は苦手で・・。というか、調べる気すらないこの無関心さ・・)
pocoさんは近現代に造詣が深いのですねー。
来年弾きたい曲を拝見してもそう感じていました。
私にとっては、まだ未知の領域なので、これから勉強してみようかなと思っています。
食わず嫌いというのも、もったいないですしね。

投稿: ぽりぃ | 2008年12月19日 (金) 01時26分

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