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馬の耳に念仏的コンサートレポート:ラン・ラン編

Langlang 一昨日は、若手ピアニストの第一人者、今夏の北京オリンピックの開会式でも見事な演奏を披露した、ラン・ラン氏の演奏を聴きに行って参りました。

但し、今回はピアノのソロリサイタルではなく、ピアノコンチェルトだったので、彼の演奏のみを純粋に楽しめたわけではありませんでしたが、コンチェルトはそれはそれでとても楽しめる音楽なので、オーケストラのレポートとともにどうぞ。

オーケストラはNYフィル。
指揮はクリストフ・エッシェンバッハ(Christoph Eschenbach)。
パリ管弦楽団の主席指揮者です。

プログラムは以下の通り。

Beethoven:Piano Concerto No. 1 (C-major)
Bruckner:Symphony No. 9

***以下、長文記事になります****

ホールはNYフィルの本拠地、リンカーンセンター内のエイヴリー・フィッシャーホール。
いきなりダメ出しですが、このホール、本当に音響がよくないです。
オーケストラも演奏者も最高レベルなのに、本当にもったいないです。
ピアノは当然スタンウェイでしたが、どうにも音が乾いて聞こえます。
前回のカーネギーホールでのポリーニの演奏に比べたら、残響の味気ないこと・・。

席は3階席でしたが、左側の前の方だったので、鍵盤がとてもよく見えました。

さて、お目当てのピアノ曲、ベートーベンのピアノコンチェルト1番は、
作曲された時期も早いためか、非常にモーツァルトっぽいです。
途中、ベートーベンらしい力強いフレーズも出てきますが、後期のピアノソナタや、
交響曲にみられる重厚感は全くなく、とても心地よく聴けます。

そして、ランランさん、非常にモーションが大きく、まさに、「全身で」弾いているといった感じです。淡々と弾かれるポリーニ様と比較すると、非常に対照的でした。
ピアノを前にした彼は、一瞬のうちに何かにとり憑かれたような恍惚とした表情へと変わり、一心不乱にピアノを弾きます。
「えっ、大丈夫かな??」と思ってしまうくらい。
どのくらい「トランス」しちゃってるのかというと、コチラ
(さすがにステージを歩き回るようなことはありませんけどね。)
弾き終わると、普通の男の子の表情(とにかく童顔)に戻ります。
その全身での曲想表現に、観客は皆引き込まれるのでしょうね。

演奏そのものですが、とてもきれいなピアノの音(フォルテの逆)を出す人だなぁ、
と思えました。特に、ピアノ(p)での速いパッセージはとても軽やかでした。
強弱にも決してムラがなく、とにかく粒の揃った、とても美しい演奏でした。
逆に、ベートーベンっぽい部分は非常に力強く、迫力がありましたね~。
全体的には、ピアノもフォルテもとても優しい音で演奏されているという印象でした。
もちろん、タッチは常に正確。ミスなしだったのではないでしょうか?

纏めると、個人的には、聴かせる演奏というよりも、魅せる演奏
といった印象が強く残ったコンサートでした。

その他考察です。

<鍵盤を見ていない?>
何しろ、トランス状態なので、目をつぶっている(と思われる)時間が長く、
一方、ピアノの音は続いているので、これは寝ながら弾いているとしか思えない!

<指揮をしている?>
時折、空いている腕で指揮をしているような仕草を見せるランランさん。
実際、本当にオーケストラのソロに入りの合図を出しているような場面もありました。
ピアニストから指揮者に転向する人は多いので、彼も将来は・・?
(エッシェンバッハさんも、もとはピアニストだったそうです。)

<⇒一人オーケストラ?>
指揮をしつつ、演奏も。目を瞑りながら、自分の出している音を聴く・・。
指揮者と演奏者と観客の3役を一人でこなされているかのようでした。

<意外と落ち着きがない>
オーケストラが始まって、ピアノパートが始まるまでの間、ピアノの前でじっとしていることのないランランさん。
自分の指をじーっと見つめてみたり、のびをしてみたり、汗を拭いてみたり。
彼なりのリラックス術なのかもしれませんね。

以下は、各楽章&アンコールレポート(感想)です。

Beethoven:Piano Concerto No. 1 (C-major)
・1楽章(Allegro con brio)

非常にモーツァルトっぽい楽章。
NYフィルの音は透明感に満ちていて、晩秋にも拘らず、春の訪れを感じさせるような音色でした。弦、管のバランスもよく、ピアノの音をよく引き立てていました。
ランランさんのピアノは、一音一音がとても丁寧で、突出した音が出ることは決してなく、非常に「麗らかな」演奏でした。
中間部から後半の長いピアノのソロパートは、この楽章の聴かせどころ。ベートーベンらしさが出ている部分でもあり、出だしの軽やかさとはまた違った迫力のあるランランさんの演奏を堪能できました。

・2楽章(Largo)
オーケストラとピアノの調和が見事でした。
どちらかがどちらかを打ち消すこともなく、見事に融和していました。
コンチェルトはどちらかが目立ってしまうケースがよくありますが、こんなに絶妙なバランスのコンチェルトは初めてでした。
Largoゆえ、ゆったりとしたメロディーが続くのですが、ピアノ(p)の音がどれも美しく、これこそがプロのピアニストの真骨頂なのだろうな、と改めて感じた次第。

・3楽章(Rondo Allegro)
いきなり、ピアノの独奏から始まりますが、このロンドがとっても気持ちよかったです。
トランス状態のランランさんの調子もぐんぐん上がり、ノリノリでした。
聴いている(見ている?)方も、とても楽しくなるような演奏。
軽快なタッチで曲をどんどん盛り上げてくれます。
この速くて軽快なリズムにも拘らず、オーケストラとの一糸乱れぬ演奏は、
素晴しいの一言。
オーケストラ、指揮者、ピアニストとの信頼関係がなせる業ですね。

ショパン:エチュードOp10-3(別れの曲) アンコール
コンチェルトだったので、予想もしていなかったアンコール。
情感たっぷりに弾いて下さいました。
中間部の盛り上がるところは、非常に速く、かつ正確なタッチ。
そして、終わりはまさに消え入るようなppで、この方の持ち味が遺憾なく発揮されていたようでした。
ランランさんは激しい曲よりも、こういうメロディアスな曲がお得意なのかもしれません。

Bruckner:Symphony No. 9
この曲になると、帰ってしまう観客もちらほら。
やっぱり、みなさんランランさん目当てなのかもしれませんね。
私はしっかり最後まで聴いてきました。
オーケストラの数も増え、音量も倍増!
金管、打楽器の出番が多く、眠ることもできず(って、おいおい・・・sweat02NYフィルの迫力を十分に堪能することができました。
(予習不足にて、こんな幼稚な感想ですみません・・・。)


ランランさんですが・・・

当日配られたブログラムをよくよく読むと、この方は13歳のときには、あのショパンのエチュードを全曲(24曲)を習得し、全曲の人前演奏もこなされていたとか。
やはり、演奏家は普通の人ではないのですね~・・・。
尚、今回私が聴いた演奏はオーケストラは違いますが、CDになってますので、機会あればどうぞ。

(最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございました。)

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コメント

ぽりぃさん、こんにちは。
有名なピアニストの生演奏を次々と聴きに行かれていて、本当にうらやましいです。
と同時に、とても丁寧で分かりやすい説明ありがとうございます。

ランラン、もちろん私は生で聴いたことないのですが、
N響アワー(NHK教育で日曜の夜にやっているやつ)に何気なくチャンネルを合わせたら
この方が、まさにトランス状態で演奏されているのを初めて見て、
ずいぶん驚きました。

どんな曲だったか忘れましたが、
まるで聴衆に語りかけるかのように、
ピアノを弾きながら、客席に向かって百面相してました。
当時は、ランランの存在を知らず、どんな人なのかとあわててネットで調べましたよー

あのパフォーマンスというか演奏スタイルはしっかりと目に焼きついたのですが、
あまりに「見る」ことに集中してしまったために、「聴く」ほうがおろそかになって、演奏は覚えていません。
でも、素敵な演奏をされるんですね。
また聴いてみたくなりました。
とはいえ、ランランの場合は、あの見た目も重要なので、CDとか単なる音源を聴くのはもったいないですよね。
やはりビジュアル化されたものでないと・・・。

全くの余談ですが、ランランって、数年前、日本で時代の寵児としてもてはやされた
某六本木のIT社長に似てません??

投稿: ももりん | 2008年11月 8日 (土) 07時29分

ももりんさん、おはようございます。
いつも即コメントありがとうございます!
>有名なピアニストの生演奏を次々と
なんか、自分でも意地になって聴きに行っているような気がしてきています(笑)
言葉を変えれば、無節操ともいうのかもしれません・・。
>某六本木のIT社長に似てません??
あはは!(爆笑!)似てます似てます!!
考えもしませんでしたが、言われるとよく似てますよね~!!
でも、当然のことながら、ランランさんの方が、善人顔してますよね。
で、話は戻ると、ランランさんって、パフォーマンスのイメージが強烈なのか、
私の先生は、「見世物的で嫌いです」とハッキリ言ってました・・。
好き嫌いが分かれるのかもしれませんね。
でも、やっぱり演奏はさすがでしたよ~。

投稿: ぽりぃ | 2008年11月 8日 (土) 07時56分

目をつぶってオーケストラの音を聴く、ひとり指揮をする、(あと歌う、体をゆする)というのは、グールドのお家芸ですが、ランランさんも!? 
私が行ったランランさんのコンサートは、基本がピアノ・ソロでしたので、そういう一幕は見られなかったです。また別の一面を知りましたhappy01

投稿: gezkaz | 2008年11月 8日 (土) 08時32分

gezkazさん、こんにちは!
いつもコメントありがとうございます!
そういえば、gezkazさんもランランさんのコンサートに行かれたと
記事にされてましたよね。
ソロコンサートでの彼は比較的おとなしかったのでしょうか?
まぁ、ソロなら指揮(マネ?)はしないでしょうが、
寝ながらの演奏はされていたのではないでしょうか?
いずれにしても、この方の演奏はビジュアルとセットでないと、
満足度半減ですよね~。coldsweats01

投稿: ぽりぃ | 2008年11月 8日 (土) 09時22分

寝ながらの演奏、してましたよぉ!
かなーり陶酔型でした。
パフォーマーですよねー、ランランさん。

投稿: gezkaz | 2008年11月 8日 (土) 12時03分

gezkazさんへ:
ランランさん、やっぱり、そちらでも寝てましたか?
う~ん、それって、ピアノの演奏とはまた何か別の種類の特技ですよね~
どうせなら、足footで弾くとかやってほしいかも。
(ランランさんファンに怒られそう~・・。)

投稿: ぽりぃ | 2008年11月 8日 (土) 12時19分

これは、見てみたいです。
ももりんさんのコメントを見てN響アワーも必見だなと思いました。
大体毎週チェックしてあまり好きではない現代音楽っぽいもののときは見ないようにしているのですが、もったいないことかもしれません~~~~~。

投稿: のぞみ | 2008年11月 8日 (土) 21時38分

のぞみさん、こんにちは!
いつもコメントありがとうございます。
N響アワーって、今もやっているんですね~。
子供の頃は、あんな退屈な番組はない、と思っていたのですが、
今の私なら、毎週かじりつきかもしれません(笑)
そういえば、こちらにはクラシック関係の音楽番組ってないかも・・
あれだけ、たくさんのチャンネルがあるくせに・・

投稿: ぽりぃ | 2008年11月 8日 (土) 23時51分

youtube見ました~
Lang Lang gone Madって題名でしたね(笑)
北京オリンピックの時にピアノ弾いていた姿を
見て、表情豊かというか表現力豊かな人だわ!と
感じました。彼の頭の中で曲のイメージがどうなって
いるのか知りたいです・・・
いろんな演奏家のコンサートを見ることができて
刺激をうけますね!

投稿: ひろ | 2008年11月 9日 (日) 14時49分

ひろさん、こんにちは!
お返事遅くなってしまって、ゴメンナサイ!!
(昨日はちょっと忙しくしてて・・。詳細は後で記事にしますね。)
ランランさんの動画見ていただけました?
あれ、怖いですよねぇ~・・・。
ランランさん自身が「芸術品」という感じすらしますよね。
でも、彼の演奏はとても素敵でしたよ。
もちろんですが、さすがプロのピアニスト、といった感じでしたhappy01

投稿: ぽりぃ | 2008年11月10日 (月) 02時13分

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